「生成AIを使えば何でもできる」——そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

今回、ITコンサルタントとして「AIの限界を自分で確かめる」ために、Claude(生成AI)と一緒に名刺づくりに挑戦しました。結論から言います。仕上がりは失敗でした。

でも、この失敗から得た教訓は、AIを活用するすべてのビジネスパーソンにとって、非常に重要なものだと感じています。ぜひ最後までお読みください。

Claudeと名刺づくりに挑戦した経緯

私はITストラテジストとして、中小企業のDX推進や IT戦略立案を支援しています。クライアントに「AIを活用しましょう」と提案する立場として、まず自分自身がAIを実体験することが重要だと考えています。

今回のテーマは名刺作成。実は名刺のリニューアルを検討しており、「せっかくならAIを使って作ってみよう」と思い立ったのがきっかけです。

AIと進めた名刺作成プロセス

Claudeは画像生成には対応していないため、デザインツールの選定から相談しました。Claudeからは Canva+ラクスルの組み合わせを提案してもらい、以下のサポートを受けました。

  • レイアウトとデザインの方向性(HTML形式でのモックアップ作成)
  • キャッチコピーや文言の提案・ブラッシュアップ
  • フォントと配色の選定アドバイス(紺×ゴールドのビジネス向けデザイン)
  • QRコードの作成方法と名刺への組み込み方

AIとのやり取りはとてもスムーズで、「これは使える!」と手応えを感じていました。データ上では完成度の高い名刺デザインができあがり、意気揚々とラクスルに入稿。数日後、印刷された名刺が手元に届きました。

届いた名刺を見て愕然——3つのやらかし

封筒を開けた瞬間、思わずため息が出ました。

① 文字が小さすぎて読めない

画面上では問題なく見えていた文字サイズが、実際に印刷すると非常に小さく、特に老眼の方には読むのが辛いレベルでした。名刺のサイズは91×55mmと小さく、印刷物の「実寸感覚」をAIは持っていないのです。

② 紺×グレーの配色が印刷で識別不能に

デジタル画面上では紺とグレーが美しく区別できていましたが、実際の印刷物ではほぼ同色に見える状態でした。モニターはRGBの発光色、印刷はCMYKの反射色——この根本的な違いをAIは考慮できていませんでした。

③ QRコードが小さすぎてスマホで読み取れない

デザインのバランスを重視してQRコードを小さくしたところ、実物ではスマホカメラでの読み取りができないサイズになっていました。QRコードには「最低限必要な印刷サイズ」という物理的な制約があり、ここもAIの盲点でした。


なぜAIはこのミスを防げなかったのか

AIはデジタルデータの世界で生きています。ピクセル単位の美しさは理解できても、印刷物の物理的制約・人間の視覚特性・老眼という現実を、まだ十分に考慮することができません。

これはAIが「ダメ」なのではなく、AIが得意なことと苦手なことがある、ということです。ITコンサルタントとして正直に言えば、AIは万能ではなく、あくまで道具です。使う人間側のリテラシーが問われます。

今回の教訓:AIを上手に使うための3つのポイント

① 必ず実物大で印刷して最終確認する

印刷物はデジタルデータのまま完成と判断してはいけません。入稿前に必ず家庭用プリンターで実物大に印刷し、文字サイズ・配色・QRコードの読み取りを人間の目で確認することが必須です。

② AIへの指示に「制約条件」を明示する

「印刷物であること」「最終的な仕上がりサイズ」「老眼でも読める文字サイズにすること」——こうした制約条件をプロンプトに明示することで、AIはより適切な提案をしてくれます。AIに任せきりにせず、人間が条件を設定することが重要です。

③ AIと人間の役割分担を明確にする

AIが得意なこと(アイデア出し、文言作成、デザインの方向性提示)と、人間が確認すべきこと(印刷品質、物理的な使いやすさ、最終的な判断)を明確に分けることが、AI活用の基本です。

中小企業のDX推進にも共通する教訓

今回の名刺作成の失敗は、実はDX推進の現場と非常によく似た構造を持っています。

「AIやシステムに任せれば大丈夫」という過信は、ビジネスの現場でも同様のミスを招きます。ITツールはあくまで手段であり、最終的な判断・確認・責任は人間にある。これはDX推進においても変わらない原則です。

AIを「使いこなす人材」を育てることが、真のDX推進の第一歩だと、この小さな失敗を通じて改めて実感しました。

まとめ

生成AIは非常に優れた道具ですが、万能ではありません。今回の名刺作成の失敗から学んだことをまとめます。

  • AIはデジタルの世界に生きており、印刷・物理・人体への感覚は持っていない
  • 制約条件を明示したプロンプト設計が、AIの出力品質を大きく左右する
  • 最終確認(印刷物の実物チェックなど)は必ず人間が行う
  • AIと人間の役割分担を明確にすることが、AI活用成功の鍵

「失敗した」で終わらせず、次の名刺づくりにしっかり活かしていきます。

みなさんの生成AI活用の失敗談や工夫、ぜひコメント欄で教えてください!


著者:中村 征郎
ITストラテジスト/中小企業診断士/ITコンサルタント
システムアクティベーション株式会社
中小企業のIT戦略・DX推進を支援しています。

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