「とりあえず検索」の時代が終わりつつあります
何かを買うとき、あるいは取引先を探すとき、まず検索エンジンにキーワードを打ち込む。これが長らく当たり前の行動でした。
しかし最近は、チャット型のAIに「こういう条件で比較して」と相談する人が増えています。AIエージェントが情報収集から比較検討までを支援する「エージェンティックコマース」と呼ばれる動きです。
日経クロステックの記事によると、LINEヤフーではAIエージェントを日常的に使う利用者のほうが、検索から購買に至る割合が約1.5倍高かったそうです。同社は成果の背景として、AIが判断しやすいように商品データを追加整備したことを挙げています。
私は、商品やサービスを選ぶ入口は、今後ますますチャット型AIへシフトしていくと考えています。
AIに読まれないサイトは「候補」にすら上がらない
ここで見落とされがちな問題があります。
私自身、AIを使って商品を比較検討することがよくあります。そのとき困るのが、ECサイトや企業サイトの情報が、ボット対策によってAIから取得できないケースです。
AIが情報を取れなければ、そのサイトの商品は比較表に載りません。人間なら「このサイトは開けなかったから後で見よう」となりますが、AIは取れた情報だけで答えを組み立てます。
つまり、AIに読まれないサイトは、検討の土俵にすら上がらない可能性があるのです。
これは大企業だけの話ではありません。むしろ、知名度で勝負しにくい中小企業ほど、「AIに正しく紹介されるかどうか」が受注や問い合わせに直結していくと考えています。
AIO(AI検索最適化)とは
従来のSEO(検索エンジン最適化)は、検索結果の上位に表示されることを目指すものでした。
AIO(AI検索最適化)は、AIが自社の情報を正しく読み取り、回答や比較の中で適切に取り上げてくれる状態を目指す取り組みです。SEOの延長線上にありますが、「人間が読む」だけでなく「AIが理解できる」ことを意識する点が異なります。
中小企業が今から始めるAIOチェックリスト
大がかりな投資は必要ありません。まずは自社サイトを次の観点で点検してみてください。
1. 情報がテキストで書かれているか
- 商品説明や料金表が、画像やPDFだけになっていないか
- AIは画像内の文字を読み取れる場合もありますが、テキストのほうが確実に伝わります
2. 「比較できる粒度」で情報が揃っているか
- 価格帯、対応範囲、納期、スペックなど、比較に必要な項目が明記されているか
- 「お問い合わせください」だけでは、AIは比較の材料にできません
3. よくある質問を「質問と回答」の形で載せているか
- 利用者がAIに尋ねそうな質問を想定し、FAQとして整理する
- 質問と回答がセットになっていると、AIが引用しやすくなります
4. 構造化データを整備しているか
- 会社情報、商品、FAQなどを、検索エンジンやAIが解釈しやすい形式(構造化データ)で記述する
- Web制作会社に「構造化データは入っていますか」と確認するだけでも第一歩です
5. ボット対策がAIまで一律に遮断していないか
- robots.txtやWAF(Webアプリケーションファイアウォール)の設定を確認する
- 「意図して遮断している」のか「気づかずに遮断している」のかを把握することが大切です
6. 会社の信頼情報が明示されているか
- 会社概要、実績、資格、所在地などがきちんと掲載されているか
- AIは信頼できる根拠のある情報を優先して紹介する傾向があります
7. 定期的にAIに自社のことを聞いてみる
- 複数のチャット型AIに「〇〇(自社の業種・地域)でおすすめの会社は?」と質問してみる
- 自社が出てこない、または誤った情報で紹介されていれば、改善のサインです
セキュリティとの両立をどう考えるか
ボット対策を外せばよい、という単純な話ではありません。不正アクセスや過剰なアクセスから自社を守るボット対策は、引き続き必要です。
大切なのは、「何をAIに読ませ、何を守るのか」を経営として決めることです。
- 公開して広く知ってほしい情報(商品・サービス・会社情報)
- 守るべき情報(会員専用ページ、顧客データ、管理画面)
この区分を明確にしたうえで、許可と遮断を意図的に設定する。これは、AIの社内利用ルールを決めるのと同じく、ITガバナンスの一部だと考えています。
まとめ
- 商品やサービスを選ぶ入口は、検索からAIとの対話へ移りつつあります
- AIに読まれないサイトは、比較の候補にすら上がらない可能性があります
- AIOは、テキスト化・比較できる情報・FAQ整備など、身近なところから始められます
- ボット対策は「一律遮断」ではなく、守る情報と見せる情報を区分して設計しましょう
まずは今日、お使いのチャット型AIに自社のことを尋ねてみてください。そこで返ってくる答えが、今の「AIから見た自社の姿」です。
皆さんの会社のWebサイトは、AIに正しく読まれているでしょうか。
出典 日経クロステック「AIで購入商品を提案 成約率を1.5倍に」(日経コンピュータ 2026年10月1日号) https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nc/18/092400572/092400002/
コメント